先輩の声
留学生からコメント
2012年度入局釜付 祐輔先生
オスロ留学報告
2022年8月より1年間Oslo Sports Trauma Research Center(OSTRC)に留学させていただきました。OSTRCはNorwegian School of Sport Sciencesという大学内に併設されたスポーツ外傷・障害のリスク・受傷メカニズム・予防について研究を行う世界有数の施設です。FIFA(国際サッカー連盟)及びIOC(国際オリンピック委員会)のスポーツ傷害予防における認定研究施設の一つでもあります。欧州を中心として世界各国から研究者・PhD candidateが集まっており、これまでに複数の日本人整形外科医も留学しています。当施設は、オスロ市街地からメトロで北に20分の位置にあり、周囲はSognsvann湖や美しい山々に囲まれ、春はハイキングやジョギング、夏はBBQに日光浴、秋にはブルーベリー・キノコ狩り、冬にはクロスカントリースキーと一年中多くの人々で賑わいます。
私はKrosshaug教授のもとで非接触型前十字靭帯損傷のバイオメカニクス研究に参加させていただきました。Krosshaug教授は、独自の画像解析法を確立し非接触型前十字靭帯損傷の受傷メカニズムの解析に携わるなどスポーツ外傷の動作解析における第一人者です。留学中には、体表マーカーを用いてハンドボール選手のカッティング(方向転換)時の動作解析を行い、非接触型前十字靭帯損傷リスクとされる膝外反モーメント(膝のブレ)や膝・股関節の屈曲角度などkinetics、kinematicsのデータ収集・解析を行なっていました。研究日以外は、オスロ大学整形外科関節鏡グループに所属し、靭帯再建手術(前十字靭帯、複合靭帯再建etc)、半月板手術(縫合・部分切除、同種移植)、など多くの膝関節鏡手術に参加させていただきました。米国と異なり、実際に術野に入ることができ執刀機会が得られるのは、整形外科医として非常に魅力的な点です。また、週1日はEngebretsen教授、Moatshe先生のもとアスリートの外来診察に参加し、スポーツ診療を学ぶ機会をいただきました。
オスロは、11月から4月までは冬の厳しい寒さが続きますが、身近にスキーやスケートができる環境がありウィンタースポーツ好きにはこの上ない環境だと思います。5月から徐々に暖かくなり、6月から8月は最高のシーズンとなります。基本的に最高気温は20度台前半で湿度が低く非常に過ごしやすく、フィヨルドなど大自然が味わえるのは北欧の中でもノルウェーが随一です。物価が高いのは難点ですが、治安がよく英語がどこでも通じるノルウェーは家族連れでも安心して過ごすことができますし、日本と比べて勤務時間が短く休日もしっかりと確保されるため、家族と過ごす時間が十分に得られるのも魅力の一つです基礎研究のみでなく臨床参加にも興味のある方、北欧生活に興味のある方、オスロ留学を考えてみてはいかがでしょうか?
女性医師からコメント
2008年入局(岡山大学整形外科 2003年卒) 鉄永 倫子先生
女性医師の皆様~岡山大学整形外科でご一緒に働きませんか
女性医師の皆様こんにちは。
岡山大学整形外科の鉄永と申します。整形外科に入局し、16年目を迎えております。その間に、整形外科医の夫と結婚し、2人の小学生の男の子の子育て中でもあります。
今まで整形外科を続けられたのは、尾﨑教授、前医局長野田先生、現医局長島村先生、医局・同門の先生方のお心遣いがあったからだと思います。整形外科を諦めない、続けられる環境作りをトップの方々が作ってくださったことで、関連施設に派遣されていた時も、大学で勤務している時も私のことのみならず子供たちのことについて周りの方々が自分のことのように聞いて下さり、会での託児の設置などご配慮いただきました。
岡山大学では、女性医師に対するキャリアサポート「MUSCATプロジェクト」があり、それぞれに合った働き方を一緒に模索し、実行してくださいます。また、色々な子育ての悩みや仕事の悩みなどを語り合うこともでき、一人ではないという気持ちを強く持つことができ助けられました。そのサポートを、子供たちが小さな時は利用させていただき、今は自分の経験を他の子育て中の女医さんに伝えられたらと時々顔を出させていただいております。 整形外科は、手術、リハビリ、救急、疼痛コントロールなど分野も多岐にわたり、その中で自分自身が興味の持てることがきっと見つかると思います。私自身は、運動器の長引く痛みの方々の集学的なアプローチをライフワークとしております。多職種連携できることで、他の職種の方々との関りもあり日々充実しております。
整形外科に進もうか迷っている学生さんや女性医師の方々、岡山大学整形外科の門をたたいてみてください。きっと後悔のない人生が待っていると思います。お会いできること楽しみにしております!!
2013年入局 久禮 美穗先生
2013年入局の久禮です。岡山大学整形外科の女性医師として自分の経験や思うところを伝えられたらと思います。
入局して早10年となります。私は元々整形外科医を目指していたため、整形外科の教室に入局することに特にためらいはありませんでした。どこの医局に入局させてもらおうかと考えているときに、地元である岡山大学病院に病院見学へ来させていただきました。気さくな先生ばかりで、またみんな個性的な方々でした。運動が好きな先生もいれば、オーケストラをされている先生もおられましたし、お酒が好きな先生も全く飲めない先生もおられました。それでも皆さん仲良く仕事をされており、この教室でならどんな個性を持っていても楽しくやっていけるのではと思い、入局を決めました。実際に岡大の医局で働き始め、まだまだ女性医師の少ない医局ではありますが、先人である女性の先生方が道を切り開いてくれており、とても働きやすさを感じています。女性であることで整形外科をあきらめる必要は全くありません。
当教室では、女性医師に限らず医局員全員が自分の希望等について意見を伝える機会が毎年設けられています。そして、その希望になるべく沿った人事がされています。妊娠や出産に際しても、医局がback upして、勤務先の病院へ極力負担がかからないように対応してくれ、私も安心して出産に臨めました。 また、岡山大学では岡山県下の女性医師を支援する組織(MUSCATプロジェクト)があり、復職・キャリア支援や職場での相談事や愚痴も聞いてもらえます。医局の外にも支援してもらえるところがあるのはありがたく、岡山大学の良いところかと思います。
色々書いてきましたが、岡山大学整形外科は女性医師でも働きやすい教室です。一緒に働けることを楽しみにしています。
大学院生からコメント
2013年入局 沖田 駿治先生
平成25年入局の沖田駿治です。平成23年岡山大学を卒業、津山中央病院・岡山市立市民病院で行った後、平成28年より岡山大学病院での勤務を開始いたしました。
一般に岡山大学整形外科の大学院では1年目では臨床研修を行い、2年目以降は各グループに配属し本格的に基礎研究を開始します。1年目の臨床研修では病棟業務を通じて市中病院ではなかなか見ることのない症例・手術を経験します。2年目からは配属先のグループの上司と相談の上、研究を開始します。私は関節リウマチグループに所属し、関節リウマチグループのボスである西田先生が平成29年度まで人体構成学教室(旧第二解剖)の所属でおられた縁もあり、御遺体を用いた解剖の研究を行わせていただいております。
現在は週2日程度外勤に行かせていただいており、そちらでは外来、手術手伝いが主な業務となります。大学病院内では研究の他に、外来シュライバー業、グループのお仕事(手術のスケジュール管理、データベース作成等)、手術見学やお手伝い、カンファレンスへの参加などを主に行っております。
大学病院・大学院生と聞くと漫画やドラマの影響で低収入・過酷な業務という印象をお持ちの方がおられるとは思いますが、幸いそのようなこともなく皆様に心温かい指導をしていただきながら勉強をし、子育てのお手伝いもたまにはしながら充実した日々を過ごさせていただいております。
まだ在学中ではありますが、個人的に大学で得られた大きな財産といえば、「人脈」と「論文・発表の吟味の仕方」です。「人脈」に関しては、現在でも外勤先などで困った症例があった際に実感しますが、専門家にすぐに相談することができる安心感はやはり絶大です。後者ですが、まず論文や発表などで得た情報が必ずしも正しいわけではないのだと知ることから始まりました。material & method、resultをよく読んでいると著者が隠したいこと、不都合なことがあるな!と気づくことがちょこちょこと増えてきました。
これら以外にも外来のやり方、手術のやり方・戦略、学会発表の仕方など大学院で学べることを挙げだせばきりがないと思います。大学院で学んだことは将来の診療にも非常に役に立つと考えております。拙文で大変恐縮ですが、これから大学院進学を考えておられる先生方の参考となりましたら幸いです。
2013年入局 辻 寛謙先生
2009年卒、2013年入局、2017年大学院入学の辻 寛謙です。
現在私は大学院2年生で脊椎グループに所属し、本格的な基礎研究という形で免疫病理/第一病理にもお世話になりながら研究を行っております。
大学院に入って良かったと思うことは一言で言うと「知見の拡大」だと思っております。私は今まで市中病院を研修させて頂きそれなりに忙しくしてきたつもりですが、院生1年目には大学病院でしか行われていない最先端の治療とふれあう機会も持てましたし、さらに各グループの先生から学ばせて頂く機会も多く、今後の臨床での幅の広がりを感じております。現在2年目で基礎研究を行っておりますが、基礎分野は恥ずかしながら分からない事だらけで必死に勉強して知見を深めているのが実際です。実験理論、方法からデータ解析、論文作成方法など様々な分野の力が必要で、必然的に読む参考書や論文の数も増え学びの毎日です。そして学んでいく内に今まで聞いても全然頭に入ってこなかった難しい基礎分野の単語や講義が不思議と頭に残るようになってきたことも実感しており、これも成長と自分では勝手に理解しております。また自分に足りない部分を補う良いチャンスだと考え最近では英語の勉強をしたり、関連学会のセミナーにも積極的に参加したり、将来への投資を行っております。
逆に臨床勘が鈍るのでは?という心配があると思いますが、大学病院では様々な手術が行われており、それらすべての見学をさせて頂く機会は十分にあると思いますし、私個人として現在は将来へ向けて力を蓄える時間だと考え日々過ごしております。
なお、生活面においても、各学年6-8人いる大学院生全員が生活に困らない水準の収入を得ており、経済面でも非常に満足しております。海外留学されており先輩方も多数いらっしゃり、チャンスがあれば是非私も行かせて頂きたいと考えております。
整形外科は専門医制度変更という過渡期の時代だと思います。しかし学びの姿勢は医者を続けるにあたって普遍的でいつの時代も力になる事だと思います。ご自身が成長されるチャンスに少しでもご興味があれば是非近くの先輩とご相談され、入学をご検討されてはいかがでしょうか。
2017年入局 浪花 崇一先生
平成29年入局の浪花崇一です。岡山大学を卒業後、初期研修を岡山大学病院と福山市民病院で修了しました。私たちの入局年度から、整形外科では新専門医制度による専攻医ローテーションが開始され、私は福山市民病院で2年半、福山医療センターで1年間お世話になりました。専門医を取得した卒後7年目の春に大学院に入学し、現在関節リウマチグループに所属しております。今回は岡山大学整形外科の大学院生について聞かれることの多い、その仕事と生活について書かせていただきます。
まず業務についてです。以前は入学後1年目で各診療グループを回り、2年目で所属するグループが決定していましたが、現在は入学時に所属する診療グループが決定します。現行の新専門医制度では、専門医取得までに半年間の岡大病院での研修があるので、各グループの診療や治療や研究の内容、雰囲気は大学院進学を考えるまでに知ることができます。入学後すぐに所属グループが決定することで、そのグループ内の仕事や自分の研究をすぐ開始することができます。関節リウマチグループの院生の臨床業務は週1回の外来(専門外来シュライバーや一般外来担当)と週1.5日程度の外勤のみなので、その他の時間は研究や発表準備などに充てることができます。
次に生活についてです。上記の業務と自分で立てた研究・実験スケジュール次第で忙しくも暇にもできるので、ある程度のバランス感覚は必要ですが、私は妻子と夕食をとり話せる時間が増えました。忙しい時期でもやはり生活にメリハリは必要なので、朝少しランニングしたり、休日は何もなければ病院からのコールに怯えることなく家族で遠出したりしています。その他、時間を活かして医学と関係ないとある協会の理事になったり、ワインにほんの少しだけ詳しくなったりしました。このような生活の中で、基礎研究を含む複数の研究を進めさせていただきながら、昨年度はアメリカ整形外科学会(AAOS)を含む複数の学会発表の機会をいただき、家庭内の雰囲気もおそらくですが今までで一番良く、充実した日々を送らせていただいております。なお、無給医のイメージからか後輩たちが聞きづらそうに尋ねてくる収入についてもあまり心配する必要はなく、現在より大きく減って困るということはないと思います。
皆さんも岡大整形外科の大学院生になって、さらなる知識、つながり、臨床力や研究力を獲得し、実りの多い期間を過ごしてみませんか。
2017年入局 片山 晴喜先生
平成27年に鳥取大学を卒業後、福山医療センターで初期研修を修了後に岡大整形外科学教室に入局しました。
入局して一番に感じたことは同期の仲間が多い、また他大学卒の入局者でも広く受け入れていただけるという点でした。
入局後は岡大整形外科の新専門医プログラムで研修を行い、整形外科専門医を取得しました。
新専門医制度では大学院入学が専門医取得後のタイミングとなることが多いため、このまま慣れてきた関連病院での仕事を続けるか、大学院に進学するか一番悩むタイミングだと思います。
私自身、初めは大学院に抵抗があり最後まで悩みましたが、基礎研究含め大学院生の間でしか経験できないことがあると考え、大学院試験を受けました。
大学院入学後は骨軟部腫瘍グループに所属し、生理学教室にもお世話になりながら基礎研究を日々進め、学会などでの基礎・臨床など様々な発表機会をいただいています。
大学院の業務としてはグループにより特色がありますが、骨軟部腫瘍グループでは基礎研究に専念できる環境を整えていただき、平日は実験と仕事を頑張り、休日は休息や趣味の時間を取ることができています。
基礎研究などに従事できる一方手術での執刀経験は少なくなります。しかし外勤先などによって特徴があり、定期的に提出する希望アンケートなどで働き方を調整することは可能です。また様々なカンファレンスや勉強会などに時間を調整して参加することもでき、知識を蓄える時間ととらえることもできます。
基礎研究を始めたばかりの時は未知の領域でとにかくわからないことばかりでしたが、大学院生が集まりお互いの研究を発表するカンファレンスも定期的にあり、お互いに刺激をもらいながら高めていける環境だと思います。
私個人としては、大学院で学んだこと、得たものは将来的にどのような道に進むとしても役に立つと考えております。
毎年大学院を卒業される先輩方がおり、岡大整形外科の大学院に少しでも興味を持っていただけた先生はまず一度近くの先輩に相談されてはいかがでしょうか。
以上拙い文章になりましたが、これから大学院進学を考えておられる先生方の参考となりましたら幸いです。