岡山大学病院 整形外科 膝関節グループ
膝関節グループ
膝のけが・痛みでお困りの方は、ご相談下さい。
外来診察日
膝関節グループが行っている代表的な手術
1.半月板損傷
当科では可能な限り半月板を温存し、関節軟骨を守る取り組みをしています
病態
スポーツなどによって若年者に起こるものと、半月板の変性によって中高年者に起こるものがあります。原因がさまざまであるため、損傷の形も多種多様です。半月板損傷の状態によっては、放置したままにすると、さらに膝関節軟骨を傷めることもあります。
治療
抗炎症薬の内服やヒアルロン酸の関節内注射などの保存加療で症状が改善する場合、手術は必要ないこともあります。ただし、内側半月板(ないそくはんげつばん)後根(こうこん)と呼ばれる部分の断裂を認める場合、保存加療では急速に膝関節軟骨の摩耗が進行するために手術が必要です。 手術では損傷した部分を修復(縫合)しますが、治癒が見込めない断裂などでは部分的に切除する場合もあります。関節鏡を使って手術を行うので、1~2 cm程度の小さな傷が3つ程で済みます。麻酔などに要する時間を除いた手術そのものの時間は30分から1時間程度です。半月板修復術後2週間は体重をかけず、松葉杖や車いすを使ってリハビリを開始します。
縫合前(断裂した後根:赤点線)
縫合後(修復後の後根:赤点線)
抜糸後の外観(右膝)
内側半月板(ないそくはんげつばん) 後根(こうこん)断裂 術後の例
2.前十字靭帯損傷
当科では、可能な限り受傷前の関節の動きを再現するとともに、膝関節軟骨や半月板を傷つけないような手術手技を採用しています。
病態
スポーツなどで膝に大きな力が加わった際などに、前十字靭帯損傷を生じます。受傷時に半月板損傷を伴うこともあります。膝がグラグラするため、長い期間放置していると半月板や膝関節軟骨の合併損傷を起こしてしまうリスクが高くなります。
治療
手術をしない保存加療では、前十字靱帯の機能が回復することはほとんどありません。膝の安定性を再獲得し、半月板や膝関節軟骨にかかる負担を軽くするため、半年以内の手術が推奨されます。患者さん自身の組織(ハムストリング腱など)を用いた「前十字靭帯再建術」を行います。関節鏡を使って手術を行うので、小さな傷が5つ程残ります。麻酔などにかかる時間を除いた手術時間は1時間から2時間程度です。
術後は松葉杖や車いすを使いながら、ゆっくりとリハビリを行い、3週程度で退院となります。退院後もリハビリ通院をしてもらいながら、半年以上かけて徐々にスポーツ復帰が可能となります。
再建前(前十字靭帯の断裂)
再建術後
3.変形性膝関節症
変形が高度であるため手術が困難な場合でも、ナビゲーションシステムという最新の技術を用いて誤差1 mm以内を目指した手術を行っております。
病態
変形性膝関節症の原因は、加齢による膝関節軟骨の摩耗、骨強度の低下、肥満、O脚変形などさまざまで、膝関節を構成する組織全体が徐々に変形していきます。また、骨折・膝周囲靱帯損傷・半月板損傷などの外傷、化膿性膝関節炎などに続いて発症することもあります。
治療
肥満が高度である場合には、食事の内容を見直し、適切な運動が必要になることもあります。症状が軽い場合は、シップや消炎鎮痛剤を処方し、膝関節内にヒアルロン酸の注射を行ったりします。また、太ももの筋力強化や、膝の動きを改善させるリハビリテーションを行います。インソールや膝装具を使用することもあります。
このような保存加療で、膝関節の痛みが続く場合には手術治療も検討します。それぞれの患者さんの状況に応じて、人工膝関節手術を行います。麻酔などにかかる時間を除いた手術時間は1時間30分から2時間30分程度です。膝の前面に12~15 cm程度の皮膚切開が必要となります。
術後レントゲン(正面像)
術後レントゲン(側面像)
抜糸後の外観(左膝)
人工膝関節 手術後の例
2023年
古松毅之・横山裕介